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SEP 24 2025
A-POC ABLE ISSEY MIYAKEと寒川裕人/ユージーン・スタジオのプロジェクトが発表。 「Light and shadow inside me」シリーズのフランス・パリでの特別展示(主催:イッセイ ミヤケ)は10月24日より。会場構成は建築家 田根剛氏。

Left: © ISSEY MIYAKE INC. Right: Light and shadow inside me (untitled), 2024, gelatin silver print (photogram). Eugene Atelier iii, Private Collection
View the English article here.
(下記よりイッセイミヤケからのプレスリリースを引用しております。※日本での巡回等詳細は後日発表される予定です。)
“A-POC ABLE ISSEY MIYAKEは、今年で4回目の開催を迎える「アート・バーゼル・パリ」の期間に合わせて2025年10月24日(金)から10月26日(日)まで、現代美術家・寒川裕人/ユージーン・スタジオとの特別展示をフランス・パリで開催します。
本展示では、寒川氏の代表作『Light and shadow inside me』シリーズから着想を得た最新プロジェクト「TYPE-XIV Eugene Studio project」をご紹介します。
『Light and shadow inside me』シリーズには、太陽光の退色による碧緑色の作品と、銀塩印画紙とフォトグラムを用いた白黒の作品があります。最初に発表された緑色のものは、一色のインクを塗った水彩紙を折り多角柱状にしたものに、太陽の光を数週間当て、退色によって作られた絵画。続いて発表されたもうひとつの白黒のものは、同じように暗室内で一枚状の銀塩印画紙を折り、一つの光源で感光されたフォトグラムであり、今回のプロジェクトの着想源となっています。
いずれも、平面を柱状/立体にしたものに、光が当たり、照らされる部分と、「絵(ボディ)自らが作った影」が生まれます。そして絵自身がもっている光と影の跡が、退色/感光によって、美しいグラデーションとして現れます。紙と光、この2つのみで捉えた「物が存在する時点で持ち合わせる光と影」のイメージは、従来の写真・立体・絵画の枠を超える表現の新たな可能性を提示してきました。”
Left: Light and shadow inside me (untitled), 2024, gelatin silver print (photogram). Right: © ISSEY MIYAKE INC.

© 2025 Eugene Kangawa / EUGENE STUDIO

© 2025 Eugene Kangawa / EUGENE STUDIO
A-POC ABLE ISSEY MIYAKEは今回の協業で、このプロセスをさらに発展させ、一枚の布の本質へ立ち返ります。織物の最小単位であるタテ糸とヨコ糸の関係に着目し、白と黒、わずか二色の糸のみを用いて、織組織の密度によって従来の染色や色彩に頼らないグラデーション表現を実現しています。シンプルな要素から生まれる複雑な表現を追求し、光に応答する銀塩粒子と、織物を構成する糸を概念的に重ね合わせたこの試みは、「ビットレベルの布」とも言える特別なテキスタイルです。
本展示のインスタレーションデザインは、パリを拠点とする建築家・田根剛氏/ATTA - Atelier Tsuyoshi Tane Architectsが担当。一枚の布が空間を横断し、光と影、平面と立体が静かに呼応しながら、会場を満たします。さらに、制作に用いられた道具に加え、会期中に行われる寒川裕人氏とA-POC ABLEのデザイナー宮前義之氏による展示ガイドツアーや、来場者が参加できるワークショップ(常時開催)を通して、創作のプロセスを体感いただけます。
「物事は存在する時点で光と影が共存している」。本展では、その根源的な哲学を軸に、アートと衣服が交差する新たな地平を提示します。ぜひ会場でその可能性をご覧ください。
タイトル:
TYPE-XIV Eugene Studio project by A-POC ABLE ISSEY MIYAKE
会期:
10月24日(金)ー 10月25日(土)11:00-19:00
10月26日(日)11:00-18:00
会場:
40 Rue Volta, 75003 Paris, France
※入場無料(完全予約制)
会期中、展示ガイドツアーを開催します。
© ISSEY MIYAKE INC.
Light and shadow inside me (untitled), 2024
Gelatin silver print (photogram).

Right: Light and shadow inside me (untitled) #30, 2023
Gelatin silver print (photogram)
A-POC ABLE ISSEY MIYAKEについて
A-POC ABLE ISSEY MIYAKEは、作り手と受け手とのコミュニケーションを広げ、未来を織りなしていくブランドです。1998年に発表したA-POCは、服づくりのプロセスを変革し、着る人が参加する新しいデザインのあり方を提案してきました。A-POC ABLE ISSEY MIYAKEは、時代を見つめながら進化を遂げてきたA-POCを、さらにダイナミックに発展させます。一枚の布の上に繰り出すアイデアは多彩に、着る人との接点は多様に。異分野や異業種との新たな出会いから、さまざまな「ABLE」を生み出します。
デザイナー 宮前義之
1976年東京都生まれ。2001年三宅デザイン事務所に入社し、三宅一生が率いたA-POCの企画チームに参加。その後ISSEY MIYAKEの企画チームに加わり、2011年から19年までISSEY MIYAKEのデザイナーを務めた。2021年にスタートしたブランド 「A-POC ABLE ISSEY MIYAKE」で、エンジニアリングチームを率いて、A-POCの更なる研究開発に取り組む。
Web: https://www.isseymiyake.com/pages/apocable
Official Instagram Account: https://www.instagram.com/apocableisseymiyake_official/
宮前義之氏より
「このたび、ユージーン・スタジオ/現代美術家・寒川裕人氏とともに、パリにて展覧会を開催できますことを大変光栄に思います。
寒川氏は、平面から大型インスタレーション、彫刻、映像に至るまで自在に往還し、その表現は美術史や哲学に根ざした深い思索と、現代的で研ぎ澄まされた美意識とを響き合わせています。抽象性を帯びつつも感覚に鋭く訴えかける作品は、知性と感性の双方を揺り動かす力を備えています。
本展で紹介する『Light and shadow inside me』シリーズは、写真用印画紙を素材に、光と時間の痕跡を物質として定着させることで、絵画でも写真でもない新たな表現の地平を切り拓こうとするものです。
A-POC ABLE ISSEY MIYAKEは、常に素材と構造の根源に立ち返り、衣服の新たな可能性を探究してきました。本プロジェクトでは、寒川氏の思索に触発され、布を構成する最小単位「一本の糸」に立ち戻りました。白と黒、二色の糸のみを用い、織りの組織と密度によって光と影の階調を描き出す実践は、印画紙と光の現象を布の言語へと翻訳する挑戦でもあります。
― 光と影、この根源的な要素から豊かな表情を導き出す寒川氏の美学は、私たちの創作に新たな視座をもたらしました。本展は、アートと衣服が交差し、光と影が共存する根源的な美を探る実験の場です。歴史と文化が幾重にも折り重なるパリの地で、この挑戦を多くの方々と分かち合えることを心より楽しみにしております。」

寒川裕人/ユージーン・スタジオについて
寒川裕人は1989年米国生まれ。時間や存在、歴史を題材とした抽象的な絵画やインスタレーションで知られ、過去に東京都現代美術館での個展「ユージーン・スタジオ 新しい海」(2021–22)が同館最年少で開催。またその後同展が国際的に波及する形で、アジア・ASEANゆかりの複数のコレクターによって同展を原型とした約1haの常設美術館が、バリの世界遺産麓で建設されています。
現在は、作家本人とスタッフの設計で700平米超の空間の大部分がDIYで作られた、東京近郊の緑豊かな「Atelier iii」にて、様々な分野のスタッフによって制作が行われています。
そのほか金沢21世紀美術館「de-sport:」(2020)、サーペンタイン・ギャラリー (ロンドン)「89+」(2014)参加のほか、アメリカで発表された短編映画がロードアイランド国際映画祭、ブルックリン映画祭ほか複数の映画祭でオフィシャルセレクションの選出や受賞など。
Web: https://the-eugene-studio.com/
Official Instagram Account: https://www.instagram.com/eugene_studio_official/
寒川裕人氏より
「まずは、宮前さん、そしてA-POC ABLE ISSEY MIYAKEのチームの皆さんとのこのとても素晴らしい試みに感謝いたします。また、この取り組みを大きな展示として設計頂いた田根さんにも深く感謝いたします。本プロジェクトの始まりは約3年前でした。A-POC ABLEの皆さんが、この作品が持ち合わせる本質を深いところから広げ、布をゼロから作り出し、新しい言語を織るような試行、そして素晴らしい衣服に至るまで、その全てに感嘆しました
同時にイッセイ ミヤケに受け継がれているのであろう人間の本質に対する哲学― 一見、数理的アプローチや現象的実践に見える根底には、いち人間という存在への希求があること、この一致を感じたことが印象に残っています。そして試行錯誤を重ねる中、その道中で多くのアイデアの欠片が生まれました。
『Light and shadow inside me』は、太陽光の退色を用いた緑色の絵画から始まりました。一色に塗り、折り、太陽と共に作る。絵に始まり、絵に終わるこの作品は、この形に至るまでに、5年近くの試行錯誤を経ています。そのあと、習作として使用していた印画紙を用いて、モノクロームのシリーズに取りかかりました。これはは、絵具や印刷で作られたものではなく、カメラやフィルムを使わない写真であるフォトグラムという技法のものです。フォトグラムは戦前から、モホリ=ナジやマン・レイ、瑛九など多くの作家が作り、それらはたとえば花や手、球体など異なるモチーフを用いて作られたものがほとんどでした。このシリーズでは、他のオブジェクトを一切用いずに、紙そのものと光がもつ力、この2つの要素のみによって作ることを試みています。
すべての物事は、他者との関係の前に、存在する時点ですでに光と影を持ち合わせている。それを作品自らが実践するような絵画、平面作品を模索してきました。簡素な構造ですが、その日の気温や湿度、光の量など複雑な要素が絡み合い、同じものは一つとして現れません。私は本作を、光を唯一の画材とする絵画として捉えています。
今回、田根さん、ATTAの皆さんによる解釈を通じて、制作過程で用いられた道具なども展示されます。パリの皆さんにご覧いただけるのを、とても楽しみにしております。」
ATTA - Atelier Tsuyoshi Tane Architectsについて
ATTAは、フランス・パリを拠点とする国際的な建築設計事務所で2017年に建築家・田根剛により設立。多様な背景を持つ建築家、デザイナー、専門家と協力し、都市計画から建築、展覧会デザインに至るまで、多様な文化的な文脈におけるプロジェクトを手がける。「Archaeology of the Future」をコンセプトに、場所に刻まれた記憶を考古学・人類学的な文脈で読み解き、過去と未来をつなぐ建築の可能性を探求する。主な作品に、「エストニア国立博物館」、「弘前れんが倉庫美術館」、「アル・サーニ・コレクション財団美術館」、「ヴィトラ・ガーデン ハウス」、「帝国ホテル 東京 新本館」(2036年竣工予定)など。
田根剛
建築家。1979年東京生まれ。2006年より、フランス・パリを拠点とし、ヨーロッパと日本を中心に世界各地で活動。フランス芸術文化勲章シュヴァリエ、フランス建築アカデミー新人賞エストニア文化基金賞グランプリ、第67回芸術選奨文部科学大臣新人賞など多数受賞。
“DIALOGUES” Episode 11
寒川裕人氏とA-POC ABLE ISSEY MIYAKEチームとの対話を10月に公開予定です。以下のリンクよりご覧ください。
https://www.isseymiyake.com/blogs/apocable-dialogues
