遠山正道×鈴木芳雄 連載 “今日もアートの話をしよう”「いま最も注目を集める現代美術作家・寒川裕人氏が語る制作の原点」にて寒川裕人/ユージーン・スタジオのインタビューが掲載されています。

『遠山正道×鈴木芳雄 連載 今日もアートの話をしよう』にて、寒川のインタビューが掲載されています。

以下本文より引用

「いま最も注目を集める現代美術作家・寒川裕人氏が語る制作の原点」
「Soup Stock Tokyo」を立ち上げた、実業家の遠山正道氏と、美術ジャーナリスト・編集者であり、長年雑誌「BRUTUS」で副編集長を務め「フクヘン。」の愛称をもつ鈴木芳雄氏が、アートや旅、本や生活について語る「今日もアートの話をしよう」。19回目は、2021年から22年にかけて東京都現代美術館で、平成生まれの作家としては同館初、過去最年少で個展を開催した「EUGENE STUDIO(ユージーン・スタジオ)」の寒川裕人(かんがわ ゆうじん)氏に、アーティストになる経緯や制作についてお話をうかがった。

公開日:2022年9月
執筆:Text by Fumi Itose
Photo by Takashi Mishima


鈴木:ゴンザレス=トレスや河原温の何がそんなに寒川さんを刺激したんだろう。
寒川:とても個人的なものから生まれ、そして普遍的なものだったからかもしれません。作品が、大勢に向いてなかろうが、一見プレゼンテーションしようとしていなくても成立するのだと。それにもうすでに亡くなってしまった人の作品が、鮮度をもって、何年も何年も先に生きる人を深く考えさせる。それは美術でしか成し遂げられないことかもしれないと思いました。そこから更に、美術の自由さ、重要さを理解したのだと思います。これは生涯かけて楽しめるものだと思うようになりましたね。

鈴木:東京都現代美術館での個展でも、いろんなジャンルの作品が展示されていましたよね。例えば学部時代の卒業制作のひとつだったという、チェスとドラムの作品は遠山さんが絶賛していました。
遠山:あれはおもしろかったですね。
寒川:卒業制作でいくつか制作したシリーズのひとつです。スポーツの構造を分解して、新しいスポーツ、共同体をワークショップとして生み出そうとした作品ですね。
※大学学部時代の卒業制作。2020年には金沢21世紀美術館にて、この卒業制作の作品名に触発された企画展「de-sport : 芸術によるスポーツの解体と再構築」が開かれた。


寒川:僕は両方、あるいは複数が同時にある感覚が大きいです。頭の中に、常に思考する部分、観察する部分、組み立てる部分、視覚化する技術的な部分。これらが瞬間的につながることがあります。例えば《Light and shadow inside me》(和訳:私は存在するだけで光と影がある)という退色の原理を応用した作品があります。これは、家の中でふと目にした箱を見たことがきっかけとなりました。窓際に置いていた箱が、日光によって色が綺麗に退色していました。それを見たときには、すでに思考があったような感覚です。思考をして何かを考えるのではなく、常に人生の体験を引っくるめて物事をみているような。
遠山:そこからこの作品とか、モノクロの作品が生まれていった
寒川:はい。モノクロの印画紙のものも。
鈴木:この作品はある種、寒川さんの代表作のひとつとも言われているけど、そんな身近な存在から生まれた作品だったんだ。
遠山:簡単につくり方を教えていただけますか?
寒川:《Light and shadow inside me》は、水彩紙に緑色のインクを均一に塗って、その紙を五角柱などの多角柱に折り曲げます。そうすると、円形の柱状になりますよね。それを動かさずに同じ位置で太陽の光を当てます。
遠山:ちなみにどれくらい?
寒川:季節にもよりますが、1ヶ月以上が多いです。支持体、つまり紙が自身を守るかたちで、守られている影の部分は色が濃いまま変わらず、日が当たり続ける部分は退色し、色が落ち、薄くなります。
鈴木:太陽の力を借りて、紙自身が持つ影と光で色をつけるということ?
寒川:そうですね。正確に言えば、太陽によって、色が飛ぶ。支持体自身がイメージをつくります。
遠山:それだけでこんなに美しいグラデーションが生まれるんだ。
鈴木:これは絵画作品になるのかな。
寒川:最終的には絵画作品だと思います。立体的な部分もありますし、インクを塗布しているので、ドローイングといえるかもしれません。
鈴木:よくよく考えたら、これって写真にも近いですよね。写真のはじまりって日焼けじゃないですか。

(引用 了)

遠山正道
1962年東京生まれ。慶應義塾大学商学部卒業後、85年三菱商事株式会社入社。2000年三菱商事株式会社初の社内ベンチャーとして株式会社スマイルズを設立。08年2月MBOにて同社の100%株式を取得。現在、Soup Stock Tokyoのほか、ネクタイブランドgiraffe、セレクトリサイクルショップPASS THE BATON等を展開。NYや東京・青山などで絵の個展を開催するなど、アーティストとしても活動するほか、スマイルズも作家として芸術祭に参加、瀬戸内国際芸術祭2016では「檸檬ホテル」を出品した。18年クリエイティブ集団「PARTY」とともにアートの新事業The Chain Museumを設立。19年には新たなコミュニティ「新種のimmigrations」を立ち上げ、ヒルサイドテラスに「代官山のスタジオ」を設けた。

鈴木芳雄
1958年生まれ。慶應義塾大学法学部政治学科卒業。82年、マガジンハウス入社。ポパイ、アンアン、リラックス編集部などを経て、ブルータス副編集長を約10年間務めた。担当した特集に「奈良美智、村上隆は世界言語だ!」「杉本博司を知っていますか?」「若冲を見たか?」「国宝って何?」「緊急特集 井上雄彦」など。現在は雑誌、書籍、ウェブへの美術関連記事の執筆や編集、展覧会の企画や広報を手がけている。美術を軸にした企業戦略のコンサルティングなども。共編著に『村上隆のスーパーフラット・コレクション』『光琳ART 光琳と現代美術』『チームラボって、何者?』など。明治学院大学、愛知県立芸術大学非常勤講師。

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Interview article featuring Eugene Kangawa/Eugene Studio