『日経 XTREND』にて、2021年11月より始まった東京都現代美術館 個展「ユージーン・スタジオ 新しい海:After the rainbow」に関する記事が掲載されています。
( 掲載記事より一部抜粋 )
暗闇で触る「永遠に見られない」彫像も ユージーン・スタジオ展
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「ユージーン・スタジオ/新しい海 After the rainbow」は、東京都現代美術館で開催される、初の平成生まれのアーティストによる個展だ。ユージーン・スタジオは今、世界のアートシーンでも注目が高まっている。今回の個展における注目ポイントを横浜美術大学・学長である宮津大輔氏が解説する。
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“…白いキャンバスが連なるホワイトキューブを抜け、次の空間に足を踏み入れると、そこには新作《海庭》(2021年)の世界が広がっている。地下2階から地上2階まで吹き抜けとなった開放的な空間を、鏡で囲んだインスタレーションは、まるで水平線が無限に続いているようにも見える。床一面はさながら、さざ波が打ち寄せる海である。
《海庭》の英題“Critical”というタイトルは、臨海あるいは境目や境界を表す臨界といった意味を有する。 …"
“…同作品は、展示空間が海抜ゼロメートル以下であることからインスピレーションを得て制作された。江戸時代には東京湾沿いで、度重なる埋め立てによって現在の姿となった東京都現代美術館周辺地域も、このまま地球温暖化が進み、海面が上昇し続ければ、海中に没する可能性が決してゼロではないことを暗示している。
また、この英題はスプラトリー諸島や、尖閣諸島、竹島を巡る領海・領土問題に代表されるように、本来一つにつながっていながら、国家や民族などの思惑が衝突する政治問題≒領海、排他的経済水域(EEZ)についての意味をも包含しているように思われる。さらに臨界という言葉は、核分裂連鎖反応において、体系内の中性子生成と消失の均衡が保たれて反応が維持される状態を意味する。そこから連想されるのは、アジアにおける福島第一原発処理水の海洋放出摩擦であろう。…"
“…同作品の体感後、人間にのみ与えられた想像力の強さに思い至るのではないだろうか。人間は、ラスコー洞窟壁画や縄文土偶のような根源的祈りに端を発し、偶像崇拝を禁じてもなお「嘆きの壁」に聖なるものを感じたり、米国の画家バーネット・ニューマン(1905~1970年)が色面に描いた数本の色の帯に崇高(Sublime)を見いだしたりしてきたのである。…"
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