Mr. Tagi’s room and dream
2013–2014, Research, Installation, Performance, Mixed media, Dimensions variable.
“架空のスポーツ史家による、スポーツ史のリサーチ”
2014年にスポーツの歴史に関するリサーチをもとにした、“架空のスポーツ史家による、スポーツ史のリサーチ”のインスタレーション作品。 あるべき運動体の模索を試みた。“Mr.Tagi’s room”では、偶然、確率、時間の起源―あるいは領土、スタジアム ー対話、交換、集団、ジェンダ-などのワードを中心に集められたイメージ、オブジェが机や棚に並ぶ。“Mr.Tagi’s dream”は、”運動体の夢”としてワークショップを伴って撮影された、複数の映像作品である。卒業制作作品として作られた。
芸術によるスポーツの解体と再構築をめぐって
金沢21世紀美術館
金沢21世紀美術館
de-sport: TheDeconstruction and Reconstruction of Sports through Art
「芸術によるスポーツの解体と再構築をめぐって」
展覧会「de-sport: The Deconstruction and Reconstruction ofSportsthroughArt 芸術によるスポーツの解体と再構築」 金沢21世紀美術館 ハンドアウトより引用
“--私たちはスポーツにどこか芸術と通じるものを見出しています。例えば、体操やスケートの美しい動きに見惚れたり、サッカーの信じがたいボール捌きを芸術的と評したり、ひとつの競技に賭ける選手たちのさまざまな人生に感動したりするように、スポーツを表現のひとつとして捉えることもできます。一方で、芸術の広大な歴史を見渡せば、ボクシングで絵を描く、恋人からの別れの手紙を射撃の的にする、美術館の中をランナーが全力で疾走するなど、芸術家たちは、さまざまな種目を題材にして、新しい表現を切り開いてきました。
スポーツは芸術を生み、芸術はスポーツを生むのだろうか。あるいは、芸術とスポーツは本来はひとつであり、それを優れたスポーツ選手や芸術家たちは表現してきたのだろうか?
歴史を遡ってみれば、そんな謎を解くいくつかの鍵が見つかります。オリンピックの起源にもなった古代ギリシャのスポーツのお祭りは、神々への供物として開催されていたし、日本の古墳時代の「相撲」もまた鎮魂の儀式だったとも考えられています。つまり、スポーツは、もともとは芸術と同じように、「見えないものと交流する方法」のひとつとして存在しました。
言い換えれば、私たちが知っている野球、サッカー、ラグビー、テニス、ゴルフ、バスケットボール、卓球、スキー、水泳、相撲、体操など「一定のルールのもとに勝敗や記録が競われるゲーム」と定義できるスポーツは、ごく最近のスポーツの姿でしかありません。むしろ、スポーツは、その起源をたどれば、「日常の労働から離れた遊び」を意味し、音楽や演劇、絵画、舞踏などの芸術も含むものでした。しかし、宗教から切り離され、神性を失い、勝敗を競うことをエンターテインメントとして消費する現代のスポーツと、芸術は再びひとつになることはできるのでしょうか?
展覧会「de-sport: The Deconstruction and Reconstruction ofSportsthroughArt 芸術によるスポーツの解体と再構築」 金沢21世紀美術館 ハンドアウトより引用
本展の題名「de-sport」には、芸術とスポーツの関係をめぐる、このような問いが込められています。中世のフランス語で「楽しみ」を意味する「desport」(デスポール)という言葉に、英語で「解体・再構築されたスポーツ」を意味する「deconstructedsport」(デコンストラクテッド・スポーツ)の可能性を見出すことで生まれた言葉です。東京2020オリンピック・パラリンピックを来年にひかえるいま、改めてその起源に立ち返り、遊戯、身体、国家、戦争、非言語コミュニケーションといった今日の諸問題などを映し出す社会的構造物としてスポーツを再考します。9カ国10作家の芸術的な視点から解体・再構築されたスポーツを観戦・体験することを通して、語源通り「楽しむ」機会になれば幸いです。
※なお、本展覧会名は、本展出品作家の寒川裕人(ザ・ユージーン・スタジオ)の個展「supervision/Desport」に触発されています。”
展覧会「de-sport: The Deconstruction and Reconstruction of Sports through Art 芸術によるスポーツの解体と再構築」 金沢21世紀美術館 ハンドアウトより引用
4章. スポーツの起源にある創造
“——スポーツの構成要素を考えると、身体の鍛錬、競争性、非言語によるコミュニケーション、音楽性を持ったリズム、軍事的な戦略、偶然性、賭博、貨幣経済などに分解できる。逆に、これらの要素で構成されたものであれば、それはスポーツと呼ぶことはできるのだろうか。あるいは、この構造を損なわずに、まったく新しいスポーツを発明することはできるのだろうか。
ザ・ユージーン・スタジオの《Mr. Tagi’s room and dream #four-handed》は、このような問いに対するひとつの解答だといえる。架空のスポーツ史家、Mr.Tagiによる新しいスポーツを記録したフェイクドキュメンタリーであり、作家は作品の中で、ジャズを演奏しながらチェスをするという、新しいスポーツを生み出している。スポーツという言葉の語源通り、いま存在するすべてのスポーツはかつて誰かが日常を離れて夢中になるために発明したものならば、ここには、スポーツの起源にあった創造の楽しみが表現されているといえる。本展では、2014年に大学の卒業制作として発表された同作の一部を、6面の映像インスタレーションに再構成した新しいバージョンが発表される。”